| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-G-234  (Poster presentation)

ホトケノザの閉鎖花を発現させる至近要因としての近縁外来種ヒメオドリコソウ

*高倉耕一(滋賀県大・環境)

シソ科の越年草ホトケノザLamium amplexicaule L.は、きわめて普通な雑草であるものの、閉鎖花をつけるという点でその繁殖生態は独特である。閉鎖花は同花受粉のみを行う著しく小型の花である。ホトケノザは、この閉鎖花だけでなく、訪花性昆虫に花粉媒介をたよる開放花もつけ、その比率には変異があることが知られていた。つまり、ホトケノザの閉鎖花/開放花は代替繁殖戦略であり、それぞれの戦略にどれだけ投資を行うかは、環境条件によって変化することが示唆されていた。
最近の研究から、ホトケノザ閉鎖花の割合は近縁外来種ヒメオドリコソウL. purpureum L.の存在によって大きく影響を受けることが明らかになっている。ホトケノザのパッチにヒメオドリコソウが侵入すると、そのパッチ内のホトケノザ個体はほとんどすべての花を閉鎖花にする。ホトケノザは何らかの情報をもとに、ヒメオドリコソウ個体の存在を認知し、閉鎖花への投資量を増加させていると考えられるが、その情報が何か、ホトケノザがそれをどのように受容しているかについては明らかでなかった。
本研究では、ホトケノザがヒメオドリコソウの存在を認知するうえで鍵となる何らかの化合物を受容し、それに基づいて代替繁殖戦略の投資量を調整しているという仮説を立て、その化合物の存在や性質について明らかにすることを目的とした。ホトケノザの根系が分泌する何らかの化合物をホトケノザが受容しているのであれば、ホトケノザが植えられたポットの排水で潅水されたホトケノザは閉鎖花を増やすと予測される。実験の結果から、この仮説は棄却され、ホトケノザによるヒメオドリコソウの認知には根系同士の直接的な接触が必要である可能性が示唆された。


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