| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-G-236 (Poster presentation)
従来,淀川は大規模な増水が頻発し,それに適応した多様な魚種が生息していた.ところが近年,治水管理が行われ大規模な増水が減少した結果,止水域を好むオオクチバスやブル-ギル等の増加を招いたと考えられている. 2013年9月,台風18号によって、淀川枚方観測点の水位が通常より8m以上増え,最大流量が9500m3/secを記録するなど,1982年以来の大規模増水が発生した.当所では,この大規模攪乱の前後に当たる2012年と2014年に淀川全域の魚類調査を行い,その結果を比較することで,2013年の大増水がオオクチバスやブル-ギルに及ぼす影響を調べた.調査は いずれの年も7月から9月に,本流域29地点,ワンド域57地点で,地曳網を用いて実施した.
オオクチバスをみると, 本流域の採集尾数は,大増水前後で差がみられなかった.また,ワンド域では採集尾数が大増水前より増加した.このことは,オオクチバスの遊泳能力が比較的高く,ワンド域等流れの穏やかな場所へ逃避するなど,大増水に対する適応能力を有していることを示している.
一方,ブル-ギルは,本流域では大増水後採集尾数が著しく減少したものの,当歳魚の割合は高くなった.また,ワンド域でも同様の傾向を示した.このように本種は,本流域,ワンド域とも,大増水の大きな影響を受けていた.このことは,本種の遊泳能力や攪乱に対する抵抗力が弱いことを示している.また,当歳魚が増加したのは,大増水による底質環境の改変で本種の好む産卵環境が増加したためとも考えられる.産卵環境が更新されたことで,今後当歳魚の増加が続く可能性が考えられ,注意が必要である.