| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-G-237  (Poster presentation)

定着年代の異なるヒユ属外来雑草の遺伝変異の比較

*下野綾子(東邦大・理), 神戸裕貴(東邦大・理), 浅井元朗(農研機構・東北)

 雑草種子の主要な侵入ルートとして、海外からの輸入穀物への混入による非意図的輸入がある。主要な穀物輸入相手国であるアメリカ 合衆国(USA)では、除草剤の1つグリホサート剤使用量の増大に伴い、抵抗性雑草の進化が深刻な問題となっている。中でもグリホサート抵抗性のヒユ科ヒユ属オオホナガアオゲイトウは、2005年に報告されて以降急速に蔓延した。この報告から10年もたたずに、我が国の主要港湾の一部でも抵抗性個体が定着した。オオホナガアオゲイトウは雌雄異株の1年草であるが、アポミクシスによっても種子生産し、これもUSAでの蔓延に寄与したとされている。
 本研究では、オオホナガアオゲイトウの原産国からの侵入初期の挙動を明らかにすることを目的に、1)抵抗性オオホナガアオゲイトウの短期間での定着はアポミクシスによるのか、2)散布体圧(propagule pressure)によるのか、について検討した。比較対象種として、明治時代に日本に入り各地の草地や畑地などに普通に見られるヒユ属近縁種ホソアオゲイトウを用いた。
 マイクロサテライト領域の多型性を解析したところ、クローンとみなせる個体は見られず、自殖とされるホソアオゲイトウに比べても遺伝的多様性が高かった。雌株を温室で栽培したところ種子生産は見られなかったことからも雌雄異株間での他殖が行われていると考えられ、アポミクシスにより増殖した根拠は見いだせなかった。また、ホソアオゲイトウで集団間の遺伝的分化が見られたのに対し、オオホナガアオゲイトウでは見られず、創始者効果も検出できなかった。新たなこぼれ落ちと考えられる抵抗性個体が生育することから、現在も移入が続いており、散布体圧が短期間での定着成功に寄与したと考えられた。


日本生態学会