| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-G-241 (Poster presentation)
外来種であるミシシッピアカミミガメ(以下アカミミガメ)は、野外での定着数が全国で約800万個体におよぶと推定されており、在来水草の食害や固有種ニホンイシガメとの競合等、在来生態系に今後さらなる悪影響を及ぼすことが懸念されている。環境省はこの問題の解決に向けて、2016年より「アカミミガメ対策推進プロジェクト」を開始した。豊田市矢作川研究所はこのプロジェクトに参画し、逢妻女川と逢妻男川において、市民との共働によるアカミミガメの防除体制づくりを進めている。
今年度は、アカミミガメの効率的な防除に向けて、逢妻女川14.5kmと逢妻男川8kmの範囲を対象にドローンおよび目視により分布状況を調査した。ドローン調査では河川上空3~8mから両岸が入るように川幅全体を動画撮影し、甲羅干しする個体や水中を遊泳・歩行する個体の位置を地図上に記録した。目視調査では堤防を歩きながら双眼鏡を用いて観察し、確認した個体の位置を地図上に記録した。その際、土砂の堆積や植物の繁茂状況など河川内での本種の分布に影響を及ぼしうる要因も同時に記録した。調査は10月から11月中旬にかけて行った。
調査範囲では、ドローンでは531個体、目視では425個体のカメ類が確認された。調査範囲を100m間隔で区分けして区間毎の確認個体数を手法間にて比較したところ、ドローンの方が多い傾向にあった。カメが折り重なって甲羅干ししている場所などでは、繰り返し動画を確認できるドローンの方がより多くの個体を確認できた。一方、川幅全体を撮影すると場所によって相対的にカメが小さくなり、解像度の問題から種を判別出来ない場合があった。今後、撮影高度と解像度の関係について検討が必要と考えられた。今回の調査により、河川内にはアカミミガメの密度が高い場所と低い場所があることを確認した。密度が高い場所は、流れが緩やかで、甲羅干しができる岸辺と淵が近接している傾向にあることが示唆された。