| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-G-242 (Poster presentation)
水辺の外来植物は、全国的に種数が増え、分布域が拡大していることが懸念されている。しかし、その実態は十分に把握されていない。従来の国による水辺の国勢調査、研究者による調査では、人的、時間的、資金的な制約により、外来植物の全体像を把握するのは困難な状況が生じている。本研究では、現状を改善する新たな手法として、情報ツールを用いた市民科学手法を開発し、実践することを目的とした。
プロジェクトの開発は、大学教員、大学院と学部学生、町内会、地域のエアリアマネジメント、環境NPOと一般社団法人、ソフトウェア会社からなる企画者会議のメンバーが行った。 調査地区は二子玉川近傍の多摩川、野川、両河川の合流地点に4地区を設定した。調査対象種には、秋に開花し、調査地区の分布域が広く、市民による同定が容易な外来種5種(アレチウリ、アカバナユウゲショウ、アレチハナガサ、コセンダングサ、オオブタクサ)と秋の代表的な在来種(メドハギ)を選定した。参加者は、指定された地区に生育するすべての対象種の個体または個体群の種名、高さ、生育場所の特徴をGeoformを用いたスマートフォーンの画面にプルダウン方式で入力し、対象植物の写真と位置情報も送信した。企画者は収集されたデータをポータルに集約し、直ちにWebプラウザのアプリ(ArcGIS)によるデータの可視化と情報共有を行った。
プログラムは2016年の10月に2回実施し、参加者は100名であった。調査結果から、外来種の優占種は4地区で著しい相違が認められた、優占種は多摩川の左岸では、アレチハナガサ、野川の右岸・左岸では、オオブタクサとアレチウリ、多摩川と野川の合流地区では、アレチハナガサ、その下流の多摩川左岸では、メドハギとコセンダングサであった。ITCを用いた市民科学は広域的、面的な調査を可能とし、また、市民や大学生の科学教育、環境教育としても有効であった。