| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-G-243 (Poster presentation)
本研究では外来生物であるアライグマの生態に関する基礎的知見を得るため、狭山丘陵においてGPS首輪を用いたアライグマの行動調査を実施した。狭山丘陵は埼玉県と東京都にまたがる面積約3,500haの独立丘陵であり、雑木林と谷戸が入り組んだ里山環境が広がっている。その北部に位置する早稲田大学所沢キャンパスにおいて2015年9~12月に4回の学術捕獲調査(延べ58TN)を実施、3個体のアライグマを捕獲し化学的不動化処置下にてGPS首輪(CIRCUIT DESIGN,GLT-02)を装着した。各個体のデータ取得期間と取得間隔は、1F(メス, 15.09.25-15.10.22, 30分間隔)、2M(オス, 15.09.30-16.05.09, 3時間間隔)および3M(オス, 15.12.25-16.04.24, 30分間隔)である。データの測位成功数(率)はそれぞれ1F:920地点(71%), 2M:529地点(30%), 3M:2187地点(38%)と、メスの測位成功率が高く、オスでは特に日中の測位成功率が低い結果となった。30分間隔で測位を実施した2個体(1F・3M)において、単位時間当たりの最短移動距離(連続する測位点間の距離)は両個体とも夜間に長く、またメスよりもオスで長い傾向が認められた(Mean±SD, 1F: D14±37m, N92±102m, 3M: D30±77m, N215±255m)。なお、2M個体の移動軌跡は湖と重なることが多く、頻繁に湖を泳いで移動している可能性が考えられる。各月の行動圏(95%固定カーネル法)は、1F:160ha, 2M:758±96ha, 3M:716±86haとなり、行動圏面積においてもオスのほうが広い傾向が認められた。各個体の行動圏内には日中の測位点が集中する地点が複数存在しており、アライグマはいくつかのレスティングサイトを持っていると考えられる。またこれらの地点には個体間で重複も見られた。MaxEntによる生息適地解析の結果、個体ごとに各説明変数のモデルへの寄与度は異なるものの、いずれの個体も森林および水域に近く、NDVIの高い環境を選好していることが分かった(AUC 1F:0.934, 2M:0.907, 3M:0.823)。