| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-G-245  (Poster presentation)

東北地方の止水域における複数の侵略的外来種の分布拡大と水生昆虫への影響

*西原昇吾(中央大学), 永幡嘉之(山形市), 古川大恭(千葉県生物多様性センター), 小野田晃治(千葉シャープゲンゴロウモドキ保全研究会), 北野忠(東海大学), 苅部治紀(神奈川県立生命の星・地球博物館)

侵略的外来種の侵入は、里山の水辺環境に生息する水生昆虫に、各地で大きな影響を及ぼしてきた。生物多様性の高い止水域が残存してきた東北地方も、例外でない。ため池の生物多様性の指標種であるマルコガタノゲンゴロウを例として、生息地の変化と侵略的外来種の侵入について明らかにすることにより、侵略的外来種の影響と今後の保全策を検討した。
本種は環境改変の影響を受け全国で激減し、近年では侵略的外来種の侵入による地域絶滅が目立つ。2011年に種の保存法による国内希少野生動植物種に指定されたが、具体的な保全策はとられていない。
2000年代に本種が確認されていた東北各県の27地点で、2014~16年に生息現状を調査した。現地調査および聞き取りの結果、侵入地点はオオクチバス5、ウシガエル8、アメリカザリガニ7、これらの複合が6であった。これらが急増した地点では、本種はいずれも絶滅していた。例外的に、ウシガエルおよびアメリカザリガニの侵入初期の池では本種がわずかに残存していたが、長期にわたり共存する例は全国で皆無であることから、数年内に絶滅すると推測された。一方、陸上を分散し拡散の防止が困難なウシガエルおよびアメリカザリガニが、本種の生息地から2km以内に侵入しておらず、数年内に侵入する可能性が低いと判断された生息地は、生息地の11%にあたる3地点であった。
以上より、法指定後の5年間で生息地の48%で絶滅し、残る41%でも侵略的外来種がごく近距離にまで侵入していることが示された。本種の保全のために、抜本的な外来種の排除ならびに未侵入地への防御策が緊急的にとられない限り、本種は今後数年間で3地点を除いて絶滅する可能性が高い。保護増殖計画を策定し、各種対策を直ちに講ずる必要がある。


日本生態学会