| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-H-252  (Poster presentation)

植物由来天然物質であるアルギン酸と土壌微生物の相互作用解析

*町田郁子, 小泉博(早稲田大学)

微生物は自然環境中で、物質表面に付着して集合体となり、バイオフィルムを形成することによって生育に有利な場を作り出すことが知られている。そのため、微生物を本来の機能が保持された状態で利用する際には、微生物の付着・生育に適した環境を提供する必要がある。そこで本研究では、土壌微生物とアルギン酸ゲルの相互作用を解析することにより、アルギン酸の付着基質としての適性を検証した。

アルギン酸は一部の微生物により産生される一方、コンブなどの褐藻類から抽出できる多糖類であり、2価以上の金属イオンにより架橋されゲルを形成する性質を生かし様々な分野で利用されている。架橋に用いるイオンによってゲルの表面特性が異なるため、本研究では、タンパク質等の吸着に適した疎水性を呈する鉄架橋および、親水性であるカルシウム架橋アルギン酸のビーズ状ゲルを作製して培養土中に1ヶ月間設置し、時間経過に伴う変化を調べた。アルギン酸ゲル表面へのバイオフィルム形成をクリスタルバイオレット染色法を用いて調べ、培養後のゲルの乾燥重量を測定した。さらに培養土中の微生物バイオマス、そして微生物の活性の指標として土壌呼吸速度を測定した。

その結果、鉄架橋の場合のみ、培養1日後からバイオフィルムの形成が確認され、ゲルの乾燥重量も1ヶ月後に約1.3倍に増加した。また、培養後の微生物バイオマスには条件の違いによる差異は見られなかったが、土壌呼吸速度は鉄架橋のゲルを設置した場合に培養初期において低下する結果が得られた。バイオフィルム形成に伴い微生物の代謝活性が低下することが報告されていることから、今回の測定においてもそのような影響がみられたと考えられる。
以上、本研究の結果から、鉄架橋アルギン酸は土壌微生物の付着に適した表面をもち、生育に適した環境を提供する足場として機能することが示唆された。


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