| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-H-255  (Poster presentation)

樹木エンドファイトの群集構造の解析

*沖三奈絵(千葉大学理学研究科群集生態学研究室)

植物の葉内には、見かけ上健全な状態でも多様な菌類が生息し、これらは内生菌(エンドファイト)とよばれる。木本植物は草本と比較して1個体の葉の量が多いため、よい多様な菌種が群集を形成することがわかっている。このような内生菌群集は、葉内の物質組成の変化や、病原菌や害虫に対する防衛への関与を通じて宿主に生理的、また生態的にも重要な役割を果たす。しかし、このような役割を果たす内生菌群集の構造を決定する要因は、未解明である。特に環境要因と生物要因の両方を分析した研究は少なく、調べられた樹木種も限られている。
本研究では、複数の樹木種を対象として、内生菌群集の森林内での空間的分布パターンを記述する。また、宿主間での群集構造を系統関係を考慮して解析することで、内生菌群集構造へ寄主の影響を評価する。採集は北海道大学苫小牧研究林クレーンサイトにて、2016年6月から8月にかけて行った。落葉広葉樹6属9種を対象とし、各種3個体を選び、それぞれ林冠、林内部、実生の3階層から葉を採集した。その後、内生菌の単離操作を行い、ITS領域の塩基配列によりOTUを同定し、樹種と階層ごとに内生菌を記述した。さらに、内生菌群集の類似度を、Jaccard指数を用いて算出し、宿主の系統距離、さらに階層別に比較した。その結果、内生菌群集の構造には、階層間で有意な入れ替わりが見られた。このことから、内生菌群集の構造には、樹種の系統的な差異(生物要因)よりも階層の差異(環境要因)が影響していることが示唆された。


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