| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-H-256 (Poster presentation)
植物内生菌はあらゆる植物種や地域に普遍的に生息する。また一枚の葉に多様な種が共存することも珍しくなく、その種間関係に関心が寄せられている。これまでに宿主植物種、降水量、気温により種構成が異なるという報告がなされているものの、内生菌の宿主特異性については未だ情報不足である。これまでに演者らはカシ類の葉にTubakia属菌が普遍的かつ高頻度に内生していることを明らかにした。さらに樹種によって異なる菌種が優占しており、その多様性の高さが示唆された。
本研究ではTubakia属菌の宿主選好性を明らかにするため、東京都八王子市の高尾山,千葉県鴨川市の東京大学千葉演習林,静岡県賀茂郡南伊豆町の東京大学樹芸研究所、鳥取県鳥取市、京都府福知山市内のカシ天然林にてカシ類7種の内生菌を組織分離法により調査した。さらにT. dryina、T. subglobosaおよび未知種5種、計7菌種の菌糸成長を10~40℃の7温度区で比較し、菌種間の培養特性を検討した。
分離試験の結果、Tubakia属菌の相対優占度は50%前後であった。また内生菌組成には宿主樹種の違いが最も強く影響していた。宿主選好性の違いにより、Tubakia属菌は宿主選好性の強い5種(T. subglobosa、T. sp.QA-b、T. sp.1、T. sp.4、T. sp.5)、宿主範囲の広い3種(T. dryina、T. sp.2、T. sp.3)に分けられた。鳥取・福知山のシラカシ・ウラジロガシでは他調査地に比べTubakia属菌の分離頻度が低いなど群集組成の地域差も見られた。菌糸成長速度は20℃または25℃で最大で、宿主選好性の強い種よりも宿主範囲の広い種のほうが成長が速く、最大のT. dryina と最小のT. sp.4では5倍の差があった。