| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-H-257 (Poster presentation)
現在、琵琶湖では年間15万トンの水草が異常繁茂しており、漁業被害や湖底の酸素濃度低下を引き起こし底生生物へ悪影響を及ぼすといった問題がある。滋賀県では水草を刈り取り、堆肥として有効利用する事業をすすめているが、発酵中の水草の置き場所に広い空間が必要であることや堆肥の悪臭、水草の発酵堆肥化に2~3年と長時間かかることなどが課題であった。水草の短期間処理を目的として、活性酸素によって水草の細胞壁を分解、細胞質を蒸散処理し、20時間で水草を粉末処理できる装置が開発された。そこで本研究では、活性酸素処理した水草の堆肥としての効果を、従来の水草の発酵堆肥と比較することを目的とした。特に植物の成長には微生物(菌類と細菌)の、有機物を分解し、養分物質へと化学的に変化させる能力が深く関係している。このため、水草堆肥を添加した土壌中の微生物数を計数し、活性酸素処理水草を添加したことによって土壌の微生物数がどの程度変化するかを調査し、発酵堆肥と比較した。活性酸素処理した水草2種(NK,KR)と、発酵堆肥2種(H27,H25)をそれぞれ添加した土壌の微生物数を希釈平板法で求めた。対象区として水草堆肥を土壌に添加しない処理をCTとした。土壌の5次希釈液をLCA培地と混和し培養した。培養14日目にコロニー形成単位(Colony Forming Unit: CFU)数を計数し、処理あたりシャーレ5反復の平均値を求めた。これより処理6反復での平均値を求め分散分析を行った。この結果、細菌の平均CFU数はKRで他処理より有意に値が大きかった。また細菌数の増加に貢献した要素を調査するため、CFUを目的変数、水草堆肥の全炭素・全窒素濃度と酸不溶性残渣濃度、全炭水化物濃度を説明変数として、重回帰分析を行った。この結果、細菌数増加に貢献したのは添加した水草堆肥の全炭素・全窒素濃度と全炭水化物濃度であった。