| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-H-270  (Poster presentation)

琵琶湖の内湖,西の湖とその周辺湿地の生態学的機能

*安佛かおり, 横山寿(京都大学森里海連環学教育ユニット)

本研究では,淡水湿地の生態学的機能を明らかにすることを目的に,琵琶湖最大の内湖である西の湖とこれに接する北之庄沢のヨシ湿地,流入河川(蛇砂川)および西の湖と琵琶湖を結ぶ長命寺川において,2014年8月から2015年6月の間に7回の水質調査を行った。各調査時には,7地点において,直読式総合水質計により表面より底表面までの水温,クロロフィル蛍光,溶存酸素濃度の鉛直プロフィルを得るとともに,表面水のpHを測定した。また,表面水を持ち帰り,栄養塩類(硝酸態・亜硝酸態・アンモニア態の各態窒素,リン酸態リン),溶存有機炭素,懸濁物質量,強熱減量を分析した。溶存無機窒素濃度は蛇砂川で高く,ヨシ湿地においては大きな変動がみられ,西の湖では低い値がみられることが多かった。西の湖では,クロロフィルa濃度およびpHが高く,溶存酸素は表層付近で過飽和となり,水深2 mの湖底でもほぼ飽和であった。一方,水深が1 m以下のヨシ湿地では溶存酸素が飽和に達しないことが多かった。琵琶湖とつながる長命寺川の水質は西の湖の水質を反映していた。これらより,西の湖では生産が,これ以外の湿地帯では分解が卓越しているといえる。河川より流入した栄養塩類はヨシ湿地で一旦貯留され,さらに流入した西の湖において植物プランクトンの増殖により消費され,栄養塩の少ない水が琵琶湖の流入することから,内湖を含む一帯の湿地帯は栄養塩類を調節する場として機能していると結論した。


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