| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-H-271 (Poster presentation)
霧が頻発する海岸付近や山岳地帯では、霧が樹木に付着して大きな水滴となり林床へと落下する「霧水沈着」が森林の水や窒素の供給源となる。霧水沈着量は、霧に包まれる林縁やギャップ部で特に大きくなると言われているが、その空間的なばらつきは把握されていない。本研究では、霧水沈着量の空間分布を把握するために、霧が多発する兵庫県六甲山地のスギ林内で林内雨の多点観測を行った。同一森林内で、林縁(約500平方メートル)および林内(約2500平方メートル)に18個のバルクサンプラーと17個の雨量計を設置し、林内および林外雨量の月積算値の差から霧水沈着量を求めた。林分構造を把握するために、スギの樹木位置・胸高長・樹高の測定を行った。また、調査地付近の開けた場所で風速および自動霧水採取装置による霧水量の連続観測を行った。採取した林外雨・林内雨・霧水に含まれる無機イオン濃度と水の酸素・水素安定同位体比を測定した。2016年9月から10月までの林縁サイトにおける積算霧水沈着量は、積算降雨量の半分に達した。発表では、無機イオン濃度と安定同位体比の空間分布の解析結果も示し、国内のスギ人工林において霧水沈着がどの程度水や栄養物質を供給しているかを議論する。