| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-K-333 (Poster presentation)
生物群集がどのように生態系サービスの多面性に寄与しているかは未知の部分が多い。生態系サービス多面性を支えるメカニズムのひとつとして、異なる生態系サービスの供給に関わる種が共存することによる相補性の効果が考えられる。さらに、系統的に異なる種が異なる生態系サービスの供給に関わっている場合、系統的多様性が高い群集ほど相補的な関係にある種が揃いやすく、結果として生態系サービスの多面性が高くなると予想される。このような相補性の効果による生態系サービス多面性の増加を確かめた研究は少なく、加えて文化的な影響も大きいと考えられる生態系サービスを扱った検証はされていない。そこでこの研究では、文化的なものを含んだ15の生態系サービスに対して、国産主要樹種171種の有用性の有無を文献調査し、(1)有用性には系統シグナルがある、(2)生態系サービス多面性には相補性が重要である、(3)その結果、系統的多様性が高い群集ほど生態系サービス多面性が高くなる、という3つの仮説を検証した。
(1)について、ほぼ全ての有用性において有意な系統シグナルが検出された。(2)、(3)については、対象171種からのランダムサンプリングによるシミュレーションを行った。生態系サービス多面性は群集の種数に伴い単調増加した。相補性の重要性は、種多様性とともに増加し、最大で群集の生態系サービス多面性の4割弱に貢献していた。また、系統的多様性の高い群集の方が相補性の効果が高かった。一方、系統的多様性の高い群集で生態系サービス多面性が高くなる傾向は見られなかった。これらの結果は、ランダムな群集における、種多様性に伴う生態系サービス多面性増加のメカニズムは、系統的多様性に依存して異なることを示している。