| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-K-336 (Poster presentation)
ユスリカ類や貧毛類といった底生動物は湖沼生態系の重要な構成員である。また、ユスリカ類は、しばしば成虫が大量に発生し不快害虫として社会問題化したこともあり、底生動物は陸水学の重要な研究対象となっている。国立環境研究所では霞ヶ浦において、1976年以来、水質・生物の調査を継続しており、底生動物相の調査も1977年に開始して以来、多くのスタッフの手を経て続けられている。演者らが主に担当するようになったのは、1998年以降である。本報告では、近年の霞ヶ浦沖帯底生動物相の話題を中心に、底生動物相の長期変化について報告する。
調査は、流入河川に接続する2つの湾(土浦入・高浜入)、湖心および湖尻の4地点で行い、各地点でエクマン採泥器により3サンプルを採集し、475 µm のメッシュを通過しない大型底生動物を対象とした。肉眼でソーティングし、実体顕微鏡で優占する分類群を同定し、分類群ごとに湿重を測定した。
2000年以降の沖帯のユスリカ幼虫年平均現存量は乾重換算で0.5 g m-2 未満で、1970~80年代のピーク時の1割程度である。底生動物相の構成は、貧毛類とユスリカ類幼虫が優占しており、これは調査開始当初から現在に至るまで一貫しているが、ユスリカ幼虫、特に、大型種であるアカムシユスリカの密度に占める割合が、近年、顕著に低下しており、上述の現存量減少の主な要因となっている。この他に近年の目立った変化としては、(1)土浦入・高浜入におけるTanypus属ユスリカ幼虫の優占、(2) 2014年以前は記録されていなかった多毛類と諫早湾で大発生しているタバルコガタユスリカと同定される幼虫の湖尻における常在化、等が挙げられる。