| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-K-338 (Poster presentation)
水圏生態系において重要なグループである動物プランクトン類は近年様々な人為の影響にされている.中でも,化学物質の1つである農薬は農業の発展とともに使用量が増加し続け,国が定めた農薬の安全基準以下の低濃度でさえ農薬の非対象生物にまで影響を及ぼすことが報告されている.特に、日本の水田ではネオニコチノイド系農薬のイミダクロプリドおよびジノテフランが最も普及している農薬である.しかしこれらのネオニコチノイド系農薬の一部はEU全域で2013年7月より、2年間試験的に使用禁止にされるなど課題の多い剤でもある.特に農薬の曝露を受けやすい水圏生態系においては,比較的体サイズが小さい動物プランクトン類が化学物質に対する影響を受けやすい.そのため,生態系の重要な役割を担う動物プランクトン類が農薬に曝露されることで上位の栄養段階の生物に影響を与え,食物網や生態系の変化を招くことが懸念される.しかし,農薬の生物に対する研究は主に,害虫管理の観点で行われたものが多く,動物プランクトンなどの非対象の生物に対する「生態系保全」の観点での情報は限られている.生態系保全を目的とした評価をするためには,非対象生物を含めた幅広い種を対象とする必要がある.そこで本研究では,人工水田を設計し,その中でみられる動物プランクトン類に対するイミダクロプリド及びジノテフランの影響の多様性について,3年間に渡り調査し,解明することを目的とする.調査の結果,2剤に対する動物プランクトン類の感受性は分類群ごとに異なり,分類群の中の種ごとによっても感受性に多様性があることを明らかにした.