| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-L-344  (Poster presentation)

ハワイフトモモの形質多様性:進化のモデル植物

*小野田雄介(京大・農・森林生態), 甘田岳(京大・農・森林生態), 小林慧人(京大・農・森林生態), 伊津野彩子(University of Zurich), 北山兼弘(京大・農・森林生態)

 生物の形質は、異所的にも、同所的にも多様である。任意の地点の生物群集の形質の多様性を理解するためには、その環境への適応、移入分散、群集内の棲み分けなどの生態学的プロセスと、進化系統という歴史効果の影響を定量的に把握する必要がある。しかし、実際の生物群集は、歴史効果が複雑に絡むことが多く、各要因の相対的重要性を評価するのは困難である。
 ハワイ島は、大陸から遠く離れた島で、島内には劇的な環境変異が存在する(年平均気温5-25度、年降水量300-7,000mm、土地年代0-数十万年)。そのため、移入できた限られた数の種が、大きな環境傾度に沿って適応放散している。ハワイフトモモは沿岸から樹木限界まで分布するハワイ島随一の優占樹木である。ハワイフトモモの形質は生育場所によって非常に多様で(例えば、葉面積あたり葉重の変異は、世界の常緑樹の95%分位点の幅に匹敵する)、また同所集団内にも大きな多様性が見られる。ハワイフトモモを材料に用いることにより、歴史効果による混同をさけ、適応、移入分散、棲み分けなどの生態学的プロセスが多様性に果たす影響を定量的に評価できる可能性がある。そこで、我々は、ハワイ島内の環境を広くカバーするように調査地を設定し(現在28地点)、各地点で40個体の枝葉を採取し、様々な形質を測定している。
 本調査は進行中であり、今回の発表では、研究の概要と現時点での予備的な解析結果をご紹介する。


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