| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-M-362 (Poster presentation)
生物多様性の中立説は人口学的確率性が群集構造を決定する主因であると説明するが、実際の群集データが現象論的にこの仮説の予測に一致する傾向がある一方で、究極因としての説明力に欠けている。究極因としてはむしろJanzen-Connell仮説が説明するように種間の増殖率・適応度差に着目する見方が一般的であり、種間相互作用の効果を明示的に組み込んだランダム群集モデルはその数理的表現の一つと言えよう。しかしながら従来のランダム群集モデルの多くは個体密度を記述するLotka-Volterra方程式に依拠した無限集団の理論であり、有限集団や有限サイズのサンプルを記述するという視点を欠いていた。また有限の個体から構成される実際の生物群集データにフィットさせる際には都合が悪かった。
そこで本研究では両者の折衷案とも言うべき有限ランダム群集モデルを提案する。このモデルでは有限サイズの局所群集に移住の影響と人口学的確率性が働くとともに、種内および種間にはランダム行列で与えられる競争が働くと仮定する。このモデルは種分化や移住があるという点を除いては近年注目されている有限集団進化ゲーム理論が扱う状況に類似している。ランダム行列の性質を変えてどのような群集が得られたかを調べたので報告したい。