| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-M-364  (Poster presentation)

グループ間競争を考慮したゲームモデルにおける非ランダム構成ルールの効果

*笠田実(東京大学総合文化研究科), 阿部真人(国立情報学研究所)

 グループ形成は、細胞の集合から人間社会に至るまで、生物に普遍的にみられ、グループを形成することで起こる生態学的な現象がいくつかある。一つは個体にとって合理的な行動が、個人の属するグループにとって最適でない場合に起こる、社会的ジレンマである。もう一つは、グループ同士での競争である。これらは進化動態に重大な帰結をもたらすと考えられているものの、統合的な理解は不十分である。そこで本研究では、社会的ジレンマのモデルである公共財ゲームに、グループ間競争を組み込んだゲームモデルを提案する。プレイヤーはグループ間の競争に勝つためには多くのコストを支払う必要があるが,グループ内の他のプレイヤーよりは少ないコストで利益を得たいというジレンマに陥る。このような、協力行動と、非協力行動が混在するようなゲームでは、どのような相手とグループを作るかも、プレイヤーにとって大事な戦略となり得るだろう。特に、協力行動を取るプレイヤーは、協力しないプレイヤーと同じグループになるのは大きな損なので、避けた方が適応的である。従って、同じ戦略同士がグループを組みやすくなるようなグループ構成ルールを組み込んだモデルを作成し、ランダムなグループ構成を行う場合と比較した。その結果、グループ同士の競争は、公共財ゲームにおいて、協力行動を促進すること、グループを構成するメンバーの数が多く、同じ戦略がグループを作る確率が非常に高い場合に、協力行動が有利になることがわかった。この結果は、集団全体が協力行動を行う生物は、仲間認識や空間構造など、非常に精度高く同じ戦略同士でグループを組むための機構を持っていることを示唆している。


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