| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-M-366  (Poster presentation)

多様な一時浮遊生物の着底に適したシースケープのデザインの検討

*秋山吉寛(国土交通省国土技術政策総合研究所), 黒岩寛(国土交通省国土技術政策総合研究所), 井芹絵里奈(国土交通省関東地方整備局羽田空港整備事務所), 岡田知也(国土交通省国土技術政策総合研究所)

 内湾域の環境は,生息場の喪失や水質汚染によって変化する.こうした環境攪乱に対する内湾生態系の復元力は,新たな生息場を創出し,生息場ネットワークおよび生物多様性の持続性を強化することによって,増大させることができる.生態系の復元力の増大には,生息場ネットワークおよび生物多様性を考慮しながら,生息場デザインの原理を用いて,生息場の空間配置を評価する必要がある.生息場デザインの妥当性は,定量的な種多様性の尺度で評価できるが,そうした定量的尺度は一般的に注目されていない.
 本研究の目的は,種多様性の定量的尺度と数値モデルを用いて,内湾の幼生群集の種多様性を高める生息場デザインの原理を明らかにすることである.
 生息場のデザインは,生息場の面積および個数,生息場-幼生のソース間距離,生息場間距離を調整することによって変化させた.生息場のデザインは,5種類の種多様度の指数(総着底量,種数,シャノン指数,シンプソン指数,均等度)を用いて,生息場に着底した幼生群集(分散距離の異なる8種から成る)の種多様性の観点から評価した.
 幼生のソースの位置が不明である場合,幼生群集の種多様性は,生息場をより小さく多数に分け,かつ,より広域に散らばせて配置すると増加した.幼生のソースの位置が既知である場合,種多様性は,幼生のソースの近くに,大きな生息場を1つ配置することによって増加した.種多様性を高めるために適した生息場のデザインは,幼生のソースの位置が未知である場合と,既知である場合では異なると考えられる.


日本生態学会