| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-M-374  (Poster presentation)

青木ヶ原樹海針葉樹林における標高と林分構造の関係

*城取陽一郎(茨城大学理学部), 山村靖夫(茨城大学理学部), 中野隆志(山梨県富士山科学研究所), 安田泰輔(山梨県富士山科学研究所)

 青木ヶ原樹海は富士山北西麓山地帯の溶岩流上に成立したヒノキとツガが優占する常緑針葉樹林であり、土地的極相林とされ、ギャップ更新によって維持されていると考えられている。青木ヶ原樹海は標高900 m - 1300 mに広がっており、ヒノキとツガの優占度が標高勾配に沿って変化する傾向が植生図から読み取れる。それが事実ならば、標高に伴う環境要因が林分の構造に影響する可能性がある。本研究は、①林冠を優占する樹種の広域的な調査、②標高の異なる森林における林冠ギャップを含む林分の構造の調査を行うことにより、青木ヶ原樹海針葉樹林の林分構造に対する標高の影響を解明することを目的とする。
 調査①のために、各標高で林冠の樹種の被度を接線法により測定した。調査②のために、標高が異なる森林に林冠ギャップを含まない方形区と含む方形区を設置し、林分構造を解析した。
 ヒノキとツガの林冠被度と標高の間には有意な相関が認められ、標高が上がるにつれてツガ優占からヒノキ優占に変化することが明らかになった。低標高 (900 m - 1000 m) の林分では、林冠をツガが優占し、その林冠下にヒノキまたはツガの実生・稚樹が更新していた。ギャップ内の樹冠は高木・亜高木種の広葉樹が優占し、その樹冠下にヒノキとツガが更新していた。高標高 (1000 m - 1300 m) の林分では、林冠をヒノキが優占し、その林冠下にヒノキの実生・稚樹が更新していた。ギャップ内の樹冠はヒノキが優占し、その樹冠下にヒノキの実生・稚樹が更新していた。以上より、青木ヶ原樹海針葉樹林の林分構造と林冠ギャップ内部の更新過程は標高間で異なり、ギャップ更新によって、低標高のツガ林はヒノキとツガが様々な割合で混交する森林へ変化し、高標高のヒノキ林はヒノキの優占が維持されると考えられた。


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