| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-M-384  (Poster presentation)

ギャップ下に更新したウダイカンバ稚樹の3年間の樹形成長

*八木貴信(森林総研・九州)

林冠ギャップ形成直後,更新してきた高木樹種やその他の植物の間で生じる競合は森林動態パターンを決定づける重要なプロセスである。樹木は樹形発達パターンを変化させることでこの競合を生き抜いていると考えられるので,競合の中での樹形戦略を明らかにするため,岩手県北部の壮齢カラマツ人工林に設けた人工林冠ギャップにおいて,天然更新してきた高木性陽樹のウダイカンバ稚樹が,周囲下層植生との競争状況に応じて示す樹形発達パターンを3年間追跡した。すなわち競争状況について,下層植生層を完全に脱出した個体を「脱出」,下層植生の最上層を抜け出しつつある個体を「準脱出」,下層植生の最上層を構成している個体を「最上層構成」,それ以外の個体を「被圧」と区別し,「地上幹長―幹基部直径のアロメトリー関係」が示す3年間の変化を競争状況の異なる個体間でSMATRプログラム(Warton et al. 2012)によって比較した。年度内のパターンについては,地上幹長と幹基部直径は競争状況にかかわらず正に相関した。他方,(地上幹長)/(幹基部直径)の比は,「脱出」と「準脱出」個体では幹長が大きな個体ほど小さくなったのに対し,「最上層構成」個体では幹長とは無関係となり,「被圧」個体では幹長が大きな個体ほど大きくなった。年度間の変異については,「脱出」と「準脱出」個体では,年度が進むにつれて,(地上幹長)/(幹基部直径)の比が増加したのに対し,「最上層構成」と「被圧」個体では変化が検出できなかった。さらに「脱出」個体では地上幹長が増加したのに対し,それ以外の個体では地上幹長の増加が検出できなかった。このように陽樹であるウダイカンバ稚樹の樹形発達パターンは下層の競争状況に大きく影響され,下層植生層を抜け出さない個体(「最上層構成」と「被圧」)の樹形の動きは大きく抑制された。また「脱出」と「準脱出」個体の成長も肥大より伸長を志向した。


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