| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-M-386  (Poster presentation)

強度の異なる地表撹乱後の植生発達:土壌水分および物理的性質の改変を介した影響

*山崎遥(北海道大学環境科学院), 吉田俊也(北海道大学北方生物圏FSC)

北海道では、林床のササ類を根系ごと取り除き、樹木の更新を図る「掻き起こし」と呼ばれる植生管理が広く行われている。一般に、この作業では表層土壌の大半が除去されるため、埋土種子の利用可能性や土壌栄養状態の低下の懸念がある。そのため近年は表土をより多く残す改良案が示されているが、この場合には、樹木と競合する大型草本類が優占するなど期待したメリットが得られないケースも見られている。そこで本研究では、これらの作業による土壌の水分・物理的性質の変化を定量的に明らかにし、それらが施工地に更新する植生に与える影響を評価することを目的とした。北海道大学雨龍研究林内で、撹乱(表層土壌の除去)の程度が異なる4種の掻き起こし作業を異なる立地(斜面上部・下部)で実施し、施工から2年目に、深度別の土壌の特性(土壌硬度・土壌中の有機物量(bulk量)・土壌含水率)と植生の更新状況(種・個体数)を調査した。土壌硬度とbulk量は、深度に関わらず、表土をより多く残す作業で高かった。また、土壌含水率は、斜面下部で高いと同時に、表土を多く残す作業で有意に高い傾向を示した。実生由来の更新個体は表土をより多く残す作業において多く、土壌含水率の正の影響とbulk量および土壌硬度の負の影響を受けていた。一方、大型草本類はおもに土壌中に残存した根茎に由来しており、その個体数は、土壌含水率の負の影響とbulk量および土壌硬度の正の影響を受けていた。以上から、施工地の斜面上の位置および前生植生に応じた作業選択について考察する。


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