| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-O-434 (Poster presentation)
植物の3次元構造は、光合成等のための資源の効果的な獲得と利用、および外的環境要因によるダメージリスクの回避において重要な機能を持つ。本研究では、樹木の光合成生産の場である末端部シュートにおいて、枝の力学的支持機能への資源投資が光合成生産にどのような影響を与えるかを、シミュレーションにより調査した。研究対象は岐阜大学高山試験地に自生するミズナラ(日向・日陰)・ダケカンバ・ノリウツギ・オオカメノキ成木の末端シュート(長さ7-54 cm、構成枝φ < 7 mm)とした。まず、夏季の枝葉生重密度の実測値とシュート形態データから、枝の各節間(セグメント)に自重がもたらす力学ストレス(曲げ応力)を計算し、重回帰分析によりセグメントの曲げ応力を形態データから推定する式を決定した。また、ミズナラ日向/日陰シュートの風洞試験から、シュートの形態的な違いと風環境の違いとの関連性を調べた。これらを基に、各樹種のシュート形態データから、応力傾向を守りながら枝の節間長を50-300%に変化させつつ、シュートの構成に必要なコストを不変として葉の大きさを均等に伸縮させた仮想シュートを作成し、3次元光合成モデルY-plantを用いて光合成生産量を計算した。
応力計算の結果、全樹種において、曲げ応力と末端からの長さの間に正の相関が見られ、先端近くの枝で自重ストレスが小さいことが分かった。また、傾斜が急なセグメントは自重が長軸方向にかかるため、曲げ応力は小さい傾向があった。ギャップ下でのシュートの日CO2同化量のモデル計算結果は、ミズナラとダケカンバでは節間長が元のままのとき、ノリウツギとオオカメノキでは節間長を縮めたときにそれぞれ最大となった。全樹種共通の傾向として、節間長が減少すると自己被陰の増加により単位葉面積あたりの光合成量が低下しており、光が強く制限される林床低木は、節間を長く取ることにより相互被陰を回避していることがわかった。