| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-O-438  (Poster presentation)

雌雄異株植物ヤチヤナギの葉内養分濃度の集団間変異

*井上(高橋)みずき(日本大学・文理学部), 石田清(弘前大学・農学生命科学部), 智和正明(九州大学大学院・農学研究院), 上原佳敏(総合地球環境学研究所), 篠塚賢一(九州大学大学院・生物資源環境科学府), 久米篤(九州大学大学院・農学研究院)

植物の性表現は様々であり、雌雄異株植物はそのうち約4%を占める。この雌雄異株植物の性比はしばしば著しく偏り、集団の結実率に負の影響を与えることもある。その至近要因としては、生育地の光・水分・土壌の化学性などの環境要因が関与していると考えられる。メスは一般に、果実を生産するため繁殖コストが大きくなりやすく、ストレス条件下では開花を抑制したり、死亡率が高くなったりして、結果的に集団の性比がオスに偏ることがある。湿地性の雌雄異株植物であるヤチヤナギも、みかけの開花性比がオスに大きく偏る集団が存在し、土壌水中のKイオン濃度が低いほど、メスの割合が減少することが我々の研究から明らかになった。そこで本発表では、植物体内の養分濃度を測定し、集団間変異および性差を示すこと、さらに、養分濃度とみかけの開花性比との関係やメスの花序数に与える影響を明らかにした。調査地として、別寒辺牛(高層・林縁・中州)、弁天沼、茶内、兼金沼、キモントウ、生花苗、落石、ポー川、尾瀬(牛首・ヨッピ)の12集団から雌雄の葉および果実を4サンプルずつ採取し、N・P・K濃度を測定した。また開花調査、花序数計測調査を行った。ヤチヤナギは窒素固定植物で、クラスター根を形成することが知られている。葉内の養分濃度には大きな集団間変異がみとめられた。N濃度には性差がなかったが、P・K濃度はオスに比べてメスで低かった。また、葉に比べ、果実は非常に高いP・K濃度を示し、果実への投資負担が大きいことが明らかとなった。メスの葉内P・K濃度が低くなると集団中のみかけのメスの開花性比が下がったこと、またメスの葉内P濃度が低いほど、メスの花序数が減少していたことから、メスはP・Kが不足する状態では、開花頻度や開花する花序数が制限されている可能性が示された。


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