| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-O-440  (Poster presentation)

ヒノキ個体群の樹冠の枯れ上がりを決める気象要因

*隅田明洋(北海道大学), 渡辺力(北海道大学), 宮浦富保(龍谷大学)

ヒノキ林の20年分の長期データの解析から、ヒノキ林の葉面積指数(LAI)が過去の気象の影響を受けて年々変動することをすでに発表した。各年のLAIは、個体の樹冠基部の幹の太さ(DCB) の実測値を既存のDCB~個体葉面積(LA)間のアロメトリー式に代入し、全個体のLAを推定することにより算出したものである。本報告では、LAの推定誤差を、アロメトリー式にDCBを代入して計算されるLA推定値の95%予測区間の上側及び下側限界値とLA推定値との差として定義した。そして、(1)アロメトリーによる推定誤差がどの程度LAI推定値に反映されるのかを推定し、(2)LAIの年々変動がヒノキ個体群の樹冠の形態的変化と関連しているのかどうかを探り、(3)樹冠の形態的変化を引き起こす気象要因が何か、を調べた。
 誤差伝播の法則から計算したLAI(m2m−2)の95%予測区間は、(LAI−0.6)≦ LAI ≦(LAI+1.2)だった(調査期間のLAI推定値の年々変動は7.1~8.8 m2m−2)。
 個体のLAの減少は、樹冠の枯れ上がりにより樹冠基部の位置が幹上を上昇し、DCBが前年よりも小さくなることを反映している。そこで、各年の全個体のうち、樹冠の枯れ上がりによって当年のLAと前年のLAとの差(ΔLA)が負となった個体の個体数の割合(R(ΔLA<0))を求めた。R(ΔLA<0)とΔLAIとの間には強い負の関係(r2=0.73, p<0.001)が成立しており、多くの個体の樹冠が枯れ上がることがその年のΔLAIが負になる要因であることが分かった。
 また、各年のR(ΔLA<0)は、その年の7月の月降水量(PJuly)、および7月の月降水量に対する同月の可能蒸発量の比(PJuly/EJuly)との間に有意な負の関係があった(ともに p=0.02)。すなわち、夏季の少雨が樹冠の枯れ上がりを引き起こし、そのことが当年のΔLAI減少につながったものと推察された。


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