| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-Q-461 (Poster presentation)
リンは植物の成長に必須な重要元素である。しかし野外の多くの土壌では、植物が吸収可能なリンの濃度は低い。リンが非常に乏しい土壌に適応した植物種では、短い側根がボトルブラシ状に密生するクラスター根を形成するものが多い。クラスター根の機能は,有機酸や酵素の根圏への分泌により、土壌中の難溶性リンを可溶化し、根の近傍のリンをできるだけ吸収することである。
地中海地方原産のマメ科植物シロバナルピナス(Lupinus albus、以下シロバナ)はクラスター根をつくるが、近縁のホソバルピナス(L. angustifolius、以下ホソバ)はつくらない。どちらの種もリンが非常に少ない環境で生育できる。制御環境下で成長解析を行ったところ、ホソバは純同化率が高かったのに対し、シロバナは葉面積比が高かった。その結果、2種はほぼ同等の相対成長速度を示した。そこで、2種の純同化率の違いの背景にある生理的性質を明らかにすることを目的として、シュートと根の呼吸速度、根からの有機酸分泌速度、葉と根の有機酸量、光合成速度を調べた。
2種のルピナスを、制御環境下で高リン条件と低リン条件で水耕栽培した。どちらの種の根からも、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸が分泌されていた。根の乾燥重量あたりの有機酸分泌速度は、低リン条件で大きくなったが、植物種による違いはなかった。低リン条件で分泌が増えたのはクエン酸だった。クエン酸は、低リン条件のシロバナのクラスター根とホソバの根に多く蓄積していた。光合成速度は、ホソバで高く、シロバナで低かったが、種内では高リン条件と低リン条件での違いはなかった。以上の結果とこれから行う呼吸速度の測定結果を合わせて、2種の純同化率の違いとリン欠乏に対する応答について考察したい。