| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-Q-468  (Poster presentation)

窒素安定同位体比測定と顕微鏡観察を用いた森林斜面上の異なる位置に生育するヒノキの窒素吸収における菌根の寄与の比較

*杉本恵理(三重大・生物資源), 大石有美(三重大・生物資源), 松尾奈緒子(三重大・生物資源), 喜多晃平(三重大・生物資源), 松田陽介(三重大・生物資源), 矢野翠(京大・生態研), 木庭啓介(京大・生態研), 勝山正則(京大・学際融合), 鶴田健二(京大・農), 小杉賢一朗(京大・農), 小杉緑子(京大・農)

窒素安定同位体比測定と顕微鏡観察を用いた森林斜面上の異なる位置に生育するヒノキの窒素吸収における菌根の寄与の比較○杉本 恵理1,大石 有美1,松尾 奈緒子1,喜多 晃平1,松田 陽介1,矢野 翠2,木庭 啓介2,勝山 正則3,鶴田 健二4,小杉 賢一朗4,小杉 緑子4(1三重大・生物資源,2京大・生態研,3京大・学際融合,4京大・農)

 森林生態系において樹木が利用可能な窒素形態は主にアンモニア態窒素(NH4+-N)と硝酸態窒素(NO3-N)であり,樹木はこれらの窒素を直接または根に共生する菌根を介して吸収している.我が国の人工林の代表種であるヒノキはアーバスキュラー菌根菌(以下,AM菌)と共生している.本研究では,ヒノキの窒素吸収におけるAM菌の寄与を明らかにすることを目的とし,滋賀県大津市の京都大学桐生水文試験地の赤壁流域上部(AH)と下部(AL)に生育するヒノキの一次根と二次根を顕微鏡観察し,AM菌の感染率を調べた.さらに,2016年10月に採取した2地点のヒノキの葉,枝,根とメッシュバッグ法で採取した根外菌糸,2014年11月-12月(冬季),2015年7月-9月(夏季)にイオン交換樹脂膜を用いて採取した土壌中のNH4+-NとNO3--Nの窒素安定同位体比(δ15N)を測定し,それらを比較してヒノキとAM菌の窒素源を推定した.
ヒノキの根のAM菌感染率は20~30%であり,地点間,一次根と二次根間で有意差はなかった.菌糸のδ15Nは土壌NH4+-N のδ15Nに近く,ヒノキの葉と枝のδ15Nは夏の土壌NO3--N のδ15Nとほぼ同じ値であった.根のδ15Nは土壌のNO3--N ,NH4+-N それぞれのδ15Nの間の値であった.以上より,AM菌は主に土壌中のNH4+-N を,ヒノキの葉と枝は夏のNO3--N を,根は夏のNO3--N と NH4+-N の両方を窒素源としていることが示唆された.また,三次以上の根に比べ,二次根,一次根のδ15Nの方が菌糸のδ15Nの値に近かったことから,一次根と二次根はAM菌から供給されたNH4+-N を同化している可能性があると考えられた.


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