| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-Q-471  (Poster presentation)

様々な条件下における光合成速度とクロロフィル蛍光の関係

*彦坂幸毅(東北大・院・生命, CREST)

日本の人工衛星GOSAT(いぶき)は高性能の分光光度計を搭載しており、フラウンホーファー線(暗線)を利用することによって、クロロフィル蛍光強度を観測することを可能にした。クロロフィル蛍光強度は、光合成系の状態によって変化することが知られており、ある条件下では光合成速度と高い相関をもつことが知られている。実際に、観測されたクロロフィル蛍光強度と植生CO2吸収速度(GPP)の間に高い相関があることが示されており、GPPについて、以前は不可能であった直接観測に「近い観測」ができる可能性を示している。本研究では、クロロフィル蛍光から光合成速度を高精度で推定することを目指し、葉レベルのガス交換速度と蛍光強度を様々な環境条件で測定した。特に先行研究で行っていない点として、阻害剤を用いることによって光化学系IIの光阻害を人為的に引き起こし、葉が深刻なストレスを受けたときに光合成と蛍光の関係がどう変化するかを調べた。CO2濃度を低下させた場合と、葉柄を切断して水ストレスを与えた場合は、光合成速度と蛍光強度はパラレルに低下した。高温・低温にさらした場合も光合成速度と蛍光強度は低下したが、CO2濃度低下時とは違う関係となった。リンコマイシン(光化学系の修復を阻害)処理した葉を光照射させることで自然状態に近い光阻害が起こった場合は、逆に光合成は低下したが蛍光強度は増加した。これらの結果は、光合成と蛍光の関係が条件によって変わり、GPPの推定にあたっては、これらの違いを組み込んだモデルを利用する必要があることを示唆する。


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