| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-R-476  (Poster presentation)

風媒・風散布の雌雄異株植物スイバの花序構造:性的二型性とメスのジレンマ

*松久聖子, 丑丸敦史(神戸大・人間発達環境)

風媒・風散布の雌雄異株植物スイバについて、花序構造の性的二型性と時期的変化が生じる要因を明らかにするために、オスの花粉散布とメスの花粉受け取りに最適な花序構造が異なると仮説を立て、検証を行った。花粉や種子の散布には高い位置、花粉の受け取りには低い位置が有利と考え、満開期にはオスは上部へ、メスは下部へ個花を集め、メスは種子散布期になると上部へ個花を集めるように変化すると予測した。

花序構造は、満開期にはオスは花序枝を垂直方向へ伸ばし、メスは水平方向へ伸ばすという性的二型性があった。メスは、種子散布期になると垂直方向へ伸ばすように変化した。これらの結果は予測を支持した。自然状態で花序枝の高さ(上・中・下)と繁殖成功の関係を調べたところ、オスの残存花粉数は高さで差がなかった。メスの柱頭付着花粉数と結実率はともに下枝で低かった。これらは、繁殖成功が高さで決まるという予測を支持しなかった。そこで、花序枝の広がりの点から適応的な花序構造を明らかにするために、花序枝(中枝と下枝)の角度を変える変形実験を行った。その結果、オスは花序枝を広げると、中枝と下枝の残存花粉数は同様に増加した。メスは、花序枝を狭くすると中枝では結実率が低下し、下枝では影響がなかった。花序枝を広くすると、中枝と下枝の結実率はともに増加した。

以上の結果から、オスは、花粉散布量の点では花序枝の高さより広がりが有効であるにも関わらず、花序枝を垂直方向へ伸ばして上部から花粉を放つことがわかった。その利点は、花粉散布距離の増大といった花粉散布量とは別の要因であると予想される。メスは、花序枝の広がりが繁殖成功に有効であるために、花序枝を水平方向へ伸ばすことがわかった。ただし、自然状態の広がりは花粉受け取りに最適ではなかった。満開から種子散布への移行期間が短いために、花粉受け取りと種子散布との間にジレンマが生じている可能性がある。


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