| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-R-481  (Poster presentation)

雄性両性異株マルバアオダモ(モクセイ科)の長期観察からみた開花習性と成長率の性型間比較

*岡崎純子(大阪教育大学), 小山はる華(大阪教育大学), 黒沢高秀(福島大学)

 雄性両性異株は非常に稀な性型でその維持には雄株の高い繁殖成功の保証が必要である。この維持には高い花粉の競争力,強い自家不和合性などの繁殖特性や繁殖コスト,さらにそれらと関連した性型間での成長率の違いや偏った性型頻度を生み出す性型間での異なる死亡率などの要因が関与していると考えられている。これらの要因の多くは樹木の場合長期間データの解析が必要でありその視点からの研究は少ない。本研究で材料としたマルバアオダモは雄性両性異株性を示すモクセイ科の落葉高木である。本研究では本植物の性型維持に関わる要因として繁殖コストとして開花習性(開花頻度)とそれに関連した平均相対成長率(RGR)と死亡率の3要因を取り上げ,これらの要因がこの性型維持に関与しているかを明らかにした。解析には非開花個体も含め,性型やサイズクラスとの関連についても調査を行った。調査は10年以上の長期継続観察を行ってきた柏原市,和歌山市,福島市の3集団で行った。その結果以下のことが明らかになった。(1)3集団とも明瞭な開花周期は確認されなかったが柏原・福島2集団で2006・2012年での開花の「凶」の同調が確認された。(2)開花頻度は性型間での差異はなく,サイズクラスとの関連性が認められた。(3)RGRは性型間での有意な差異は認められなかった。(4)死亡率については性型間,サイズクラス間での有意な差は認めなかった。一方非開花個体の死亡率が開花個体と比較し有意に高い傾向が認められた。これらの結果から,開花頻度とそれに伴う相対成長率には性型間で差異はなく,繁殖にかけるコストは雄株と両性株には違いがみられないことが示された。また死亡率に関しても性型による偏りはなく,集団中の性比がやや雄に偏るのは雄株がより小さいサイズで開花開始するためではないか考えられる。


日本生態学会