| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-R-483 (Poster presentation)
ミズナラやコナラの種子(ドングリ)は秋期のクマの重要な餌資源であり,とくにその依存度が高い地域では,これら樹種の豊凶がクマ大量出没の有無を左右すると考えられている。このため,これら樹種の豊凶は,クマによる被害の防止・軽減の観点からも注目されている。これら樹種の豊凶は,広い範囲で空間的に同調することから,広域的に作用する気象条件がそのトリガーとなっていると予想される。そこで本研究では,ミズナラとコナラの豊凶の事前予測技術の確立に資することを目的として,これら2樹種の豊凶に関わる気象要因について検討を行った。豊凶の状況は2005年から2015年まで,ミズナラは13地点112個体,コナラは9地点100個体を対象に調査した。秋期に樹冠部の着果状況を地上から目視で観察し,枝先50cmに着く堅果数(着果指数)を指標として豊凶を評価した。気象データとしては,メッシュ農業気象データ(中央農研)から各地点の気象値を算出した。検討に用いた気象値は,春期,夏期(7,8月)の気温である。このうち春期は,樹種ごとの有効積算温量から予想される開芽盛期到達日から30日間を対象とした。これら樹種の豊凶への気象要因の影響を検証するため,統計モデルによる解析を行った。着果指数を応答変数とし,説明変数として前年の着果指数および既存文献を参考に各種気象値を投入し,比較した。ミズナラでは前年の着果指数のほか,春期,夏期の気温およびその年較差について,当年の着果指数との間に相関が認められ,また地点間で共通する気象要因が存在した。コナラでも,当年の着果指数とこれらの因子との間に相関が認められたが,有効な気象要因は地点間で異なっていた。豊凶に影響する気象トリガーの空間的な共通性は樹種間で異なり,このことは豊凶の空間的同調性の程度に影響すると考えられる。