| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-14 (Poster presentation)
渡良瀬遊水地の自然(1)と同様に渡良瀬遊水地の自然を保全・再生のための一助として、渡良瀬遊水地の生態系を支える分解者である土壌微生物の調査を実施した。
渡良瀬遊水地の自然(1)における土壌動物の調査と同様に最も大きな壁は、土壌微生物の分類であるが、調査目的を分類にするのではなく、土壌微生物の検出と検出したコロニー数から密度を測定し、環境条件と分布密度の関係について考察することにおいて調査を実施した。土壌微生物の検出に用いたのは、固体平板培地であったので、検出されたのは、好気性微生物である。また、土壌微生物による体外消化の働きについての実験をし、土壌微生物の分解者としての働きを確認した。渡良瀬遊水地と比較するために、異なる生態系における土壌微生物についても同様の調査を実施した。
土壌動物・土壌微生物は、生態系の中で物質循環における鍵となる分解者としての役割を担っている。しかし、肉眼では見ることができないため、渡良瀬遊水地の自然(1)、(2)の調査を実施するまではその存在を意識することはあまりなかった。ところが、ひとたび顕微鏡下で観察を行うと夥しいほどの土壌動物に遭遇した。また、今回検出できた土壌微生物はごく一部の好気性微生物だけだったことを考えると、土壌微生物の量の多さ、種類の豊富さは計り知れない。土の中には、いったいどれほどの種類、数の土壌動物と土壌微生物が生息しているのか、その多様さを実感させられた。
生態系において土壌動物・土壌微生物の働きは欠かせないもので、渡良瀬遊水地においても同様である。今後も渡良瀬遊水地における土壌動物・土壌微生物がその生態系にどのような影響を及ぼしているのか、植物への影響、他の動物との関係性、季節的な変動など、継続的に調査研究を実施するべきであると思う。