| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-16 (Poster presentation)
レイシガイ属のイボニシとレイシガイには性的奇形が発生することが知られている。その際、メスのオス化が進み、産卵ができなくなるなどの障害が起き、外見上もメスに陰茎が発生するなどして変化が生じる。トリブチルスズ等の化学物質がホルモンとして作用するためとされている。一般的にこれまでの研究では、多くがイボニシを用いて行われてきており、近縁種であるレイシガイやレイシガイダマシなどについては、フィールドの汚染度を測る際にイボニシの代わりに調査されることはあっても、それらの種を主な対象とした研究は少ない。そこで今回、イボニシとレイシガイの二種の違いに関して、二つの仮説を立て、調査を行なった。
仮説①片方の種がもう一方に比べて汚染によって奇形を生じる 仮説②奇形による死亡の割合が異なる
①は両者の食性などの習性が異なることから、②は文献に奇形が進行すると産卵が困難になり死亡することもあるとの記載があり、殻長と奇形率を見比べれば何らかの相関がみられるかもしれないことから仮説を立てた。各約200匹、2016年初夏に東京湾(神奈川県)の工業地区の岸壁で採集した。殻長で階級分けし、ハンマーで殻を割ってオス、メス、奇形をそれぞれ数えた。その際、陰茎長も測定した。その結果、奇形率は階級別、全体いずれもレイシガイの方が有意に高く、また奇形率は殻長に関係ないことが示された。よって仮説①が確認できたが、仮説②については確認できなかった。さらに、オスと奇形の陰茎長にほぼ差が見られなかったことから、この海域の汚染度はもともとの雌雄のホルモンバランスの違いを覆すほど高濃度であると考えられた。最後に両種の奇形率の違いについて考察した。