| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-19 (Poster presentation)
尾瀬高校理科部では平成11年より武尊山「水源の森」で自然環境調査をおこなってきた。昨年度の研究報告では調査地点間において林相の類似性が高くなると、そこに出現する甲虫群集の類似性も高くなるという仮説を立てた。本年度の研究活動では昨年度よりも調査地の範囲を広げて調査地点数を増やし、より多くのデータを得て信頼度の高い研究をおこなうこととした。その結果、各地点における種多様度(H’)については総じてカラマツ林で高値を示し、増水などで環境の攪乱頻度が高い河畔林は最も低い結果となった。このことについては攪乱の程度が多様度に影響を与えている可能性が示唆された。また、ススキ草原のような開空度が高く林床が明るい環境では多様度が低くなる傾向がみられた。甲虫相の地点間類似度については、調査地点が近接した場所で高くなるという結果が得られ、林相の類似性よりも地点間の距離が類似度に大きく影響を与えていることが考えられた。今回の調査研究を通じ、地表徘徊性甲虫相の類似性については環境要因ごとの類似性よりも、近接地における類似性がより高いことがわかった。このことは飛翔力を持たない地表徘徊性甲虫の分散力の低さに起因するものと考えられ、武尊山麓およびその周辺地域においても地理的に隔たりのあるような条件下ではそれぞれ独自の甲虫相が成立していることがわかった。