| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-21 (Poster presentation)
本校の校舎は倉敷市才公山の上に建てられており、その周辺には竹林が拡がっている。竹林は定期的に間伐をしないと、地下茎を通して非常に広範囲に拡がり、他の植物種等の生育が阻害され、生態系の単純化が生じてしまう。本校に限らず、地主の高齢化等に伴い、現在手入れが出来なくなったために発生した放棄竹林が増えており、全国的な問題として取り上げられることもしばしばである。
放棄竹林の問題を解決する手段としては、竹資材に価値があることを示すことが重要であると考えている。竹資材は、一般的には竹炭として水の浄化や消臭剤として使ったり、柵や垣、工芸品などに利用されている。さらに最近は、竹を細かくチップ状にしたものやパウダー状にしたものを肥料として利用し、作物の生育向上に利用する試みも広がりつつある。私たちは、上記以外の竹資源の有効利用法について考える中で、キノコ栽培に注目した。市販のキノコの多くは、原木栽培に加えて、菌床に植菌して発生させる菌床栽培でつくられている。このキノコ菌床については、さまざまな物質を添加させることでその質を上げる試みがなされているが、竹粉を加えた菌床をつくり、その菌床の有用性が示されれば、竹資源の新たな有効利用法を示すことにつながり、放棄竹林問題の一助となることができるかもしれない。そのように考え、私たちは、廃棄物である竹資源を使ったキノコ菌床栽培に挑戦した。
実験の結果、竹粉をキノコ菌床に配合することで、ヒラタケの収量が増加したケースが確認できた。収量が増加した理由を調べるために、菌糸の成長速度を計測したところ、発酵した竹粉や破砕した竹葉は特に、ヒラタケの菌糸の成長を促進させる効果があることを確認した。以上の結果から、今まで、放棄されてきた竹資源であっても、キノコ栽培に用いることで、新たな価値を見出すことができると考えられる。