| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-24  (Poster presentation)

ナミテントウの斑紋の多様性

*二川原湧, 橋本真諭(立命館慶祥高等学校)

 ナミテントウの斑紋は,紅型,二紋型,四紋型,斑型の四種類の形質が現れることから古くから遺伝実験などに多く用いられ,過去に地域による斑紋の差異や気温との関係が指摘されている.我々は北海道における斑紋の割合の変遷と気温などの環境との関係性や,遺伝的な要因を調べ,ナミテントウの斑紋の変化の要因の解明を最終目的とし,研究をした.

 ナミテントウには紅型,二紋型,四紋型,斑型にそれぞれ変化形が存在する.紅型には基本形の他に消失形,無紋形などが存在し,二紋型,四紋型には基本形の他に三日月形,ドーナツ形などの変化形が存在する.1943,44年の紋様別個体数のデータ(『ナミテントウの集団遺伝学』参照)と2014,15,16年のデータを比較したところ統計的に有意差はなかった.また,1943年から2016年の間には平均気温の上昇が認められることから,札幌周辺の個体群は気温による斑紋の変化は起こらないと考えられる.
 また,それぞれの型の変化形の個体数も調べた.紅型に2014年から2016年の間で基本形と変化形の割合に変化があるか調べたところ,統計的に有意差があったので紅型の斑紋は気温による影響を受けやすいと考えられる.二紋型も同様に3年間の基本形,変化形の変化を調べたところ,統計的に有意差が認められなかった.また,基本形からドーナツ形に近づくほど個体数が少ないことから,三日月形やドーナツ形は基本形に黒斑が移動してできるものと考えられる.四紋型も他の型と同様に3年間の基本形,変化形の変化を調べたところ,統計的に有意差が認められた.これより,二紋型は紅型や四紋型と違い,気温の変化を受けにくいと考えられる.また,各形の分布は二紋型と同様の結果なので,基本形からドーナツ形への変化の過程は二紋型と同じであると考えられる.

 今後はナミテントウの斑紋の変化の要因を解明するために交配実験や,気温による影響を調べるための耐寒実験などを行う.


日本生態学会