| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-25 (Poster presentation)
里山は優れた生物資源を有するが、その生物多様性を多面的に評価する手法は学術的にまだ確立されていない。得能ら(2016)は里山を景観・植生、植物相、鳥相、チョウ相、トンボ相の五つの観点(各10点満点)から多面的に評価する「里山生物多様性指数:Satoyama Biodiversity Index(SBI)」(50点満点)を考案した。筆者らはそれを改良し、愛媛県宇和島市宮下(大池)と同南宇和郡愛南町芝周辺の里山の生物多様性を総合的に評価することを試みた。
月に1回以上調査地に行き、2時間程度、鳥類・チョウ類・トンボ類を採集・観察し、調査記録をとり、一部標本を作製している。調査面積は宇和島市宮下が4.35(ha)、愛南町芝が7.75(ha)である。植生と植物相の調査は橋越清一氏(愛媛植物研究会)の御指導の下で年に数回実施している。
両調査地のSBIは宇和島市宮下:37.1、愛南町芝:37.4となった。結果を踏まえて考察すると以下の3点にまとめられる。
(1) 里山生物多様性指数(SBI)は里山の生物多様性を多面的かつ簡易的に評価することが可能である。今後は非里山的環境や純里山的環境との比較をしていきたい。
(2) SBIの評価結果より、里山の生物多様性に影響を与える主な要因は以下の2点である。
① 開発などによる人為的な森林伐採後に外来生物が侵入し帰化している。
② 農地の利用放棄等によって景観・植生の多様性が失われ、生物のすみかが奪われている。
(3)本研究を踏まえて今後はエコツーリズムに発展させていきたいと考えており、本研究で得られたデータをもとに、鳥とチョウとトンボの観察シートを作成した。
2017年5月に宇和島自然科学教室にて市内の小学生を対象にした「大池エコツアー」を開催予定である。
主な参考文献
・得能寛太・坂本宙也・小越大・丸田明日香・池田功輝(2016)『里山の生物多様性をどのように評価するのか?』「未来の科学者との対話」日刊工業新聞社 14:249-262.