| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-28 (Poster presentation)
アブラムシは、農作物に被害を及ぼす農業害虫である。被害として、植物の生長抑制、病気の媒介などが挙げられる。また、アブラムシなどの農業害虫は薬剤抵抗性を獲得する傾向にある。そのため私たちは農薬を使用しない防除における最適な条件を探るべく実験を行った。
昨年度は、マメアブラムシと豆苗を密閉した容器に入れ、高CO2、低酸素、紫外線下、control(自然状態)の4つの条件を設定し、アブラムシの24時間後の生存率と豆苗の光合成速度を測定した。その結果、生存率は低酸素<高CO2<紫外線下となったが、低酸素は植物の光合成速度に大きく影響を与えてしまうため不適切であり、次に生存率の低かった高CO2条件が適していると考えた。
今年度は昨年度の結果を踏まえて、二回目の実験を行った。二回目の実験ではより精度を高めるために容器やアブラムシの匹数などを変更した。アブラムシはセイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシ、ヨモギヒメヒゲナガアブラムシを用いた。実験方法は、アブラムシを付着していた植物ごと密閉した容器内に入れ、高CO2(濃度30000PPM)、紫外線下、controlの3つの条件を設定し、一回目と同様に24時間後のアブラムシの生存率を測定した。測定は6回繰り返した。また、紫外線下の条件については、逃避行動の有無を確認するため、厚紙をドーム状にしたものを一緒に入れた。
結果は高CO2条件下では2種ともcontrolより平均生存率が低くなったが、有意差は見られなかった。
紫外線下ではcontrolよりも平均生存率が高くなり、逃避行動も見られなかった。
これらのことから、①CO2を用いて防除を行う際は、かなり高濃度のCO2で一気に死滅させるのが効果的である ②紫外線下はアブラムシにとってある程度好環境であると考えることが出来る。
今後はCO2濃度の検討や、反復実験、紫外線を遮蔽する実験でアブラムシと紫外線の関係を明らかにすること、アブラムシ以外の生物への影響なども考えていきたい。