| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-30 (Poster presentation)
桜島の形成年代の異なる4つの溶岩地帯(昭和溶岩1946年・大正溶岩1914‐1915年・安永溶岩1779-1780年・文明溶岩1471‐1478年)から,合計4亜科23属36種のアリが採集された.これは鹿児島県本土で確認された約110種のアリの約30%に相当する.ヒラタウロコアリとヒメセダカウロコアリの2種は,今回の調査で桜島全体から初記録となった.外来アリのケブカアメイロアリは,2006年の調査では桜島溶岩地帯から採集されなかったが,今回の調査で4つの溶岩地帯すべてで採集された.
粉チーズベイトへの出現頻度によって各溶岩地帯の優占種を推定した.昭和溶岩ではツヤシリアゲアリなど主に開けた環境に生息する種が,大正・安永・文明溶岩ではアメイロアリ,オオズアリなど主に林縁,林内に生息する種が優占していた.
各溶岩地帯の4亜科の割合は,昭和溶岩ではヤマアリ亜科の割合が高く,ハリアリ亜科のアリはみられなかった.一方,安永・文明溶岩ではハリアリ亜科の割合が高く,昭和・大正溶岩でみられたカタアリ亜科のアリはみられなかった.フタフシアリ亜科のアリはどの溶岩地帯でもほぼ同じ割合であった.
野村・シンプソン指数によって求めた種構成の類似度は,安永溶岩と文明溶岩間(0.89)で最も高かった.一方,昭和溶岩と文明溶岩間(0.36)で最も低かった.
異なる調査年の間(1985年,2006年,2016年)で,種数,優占種,種構成の類似度を比較すると,1985年ではすべて大正溶岩と安永溶岩間にギャップがみられたが,大正溶岩の急速な植生の多様化にともなって,2006年では種数について,さらに2016年では優占種についても昭和溶岩と大正溶岩間にギャップが変化した.