| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-36 (Poster presentation)
森林生態系は樹木や土壌中の分解者など多様な生物から構成されており、それらの生物が密接に関係することで維持されている。森林樹種の多様性は人間の管理によって変化するが、それによる樹木種多様性の変化が森林生態系の土壌分解機能に与える影響についてはよくわかっていない。本研究では、人間の管理によって変化した樹木種の多様性が、土壌微生物の分解機能の空間的多様性にどのような影響を与えるのかについて、京都周辺の3つの森林(常緑広葉樹林、里山林、ヒノキ林)を比較して評価した。各森林から表層土壌を一定間隔で10コア採取し、コア毎に土壌懸濁液を作成し、31種類の有機物が基質として含まれるエコプレートに添加して25度で96時間培養し、土壌微生物による基質の分解度を吸光度を用いて測定した。得られた30コア×31有機物分解度のマトリクス・データに、主成分分析を適用して、コア間の分解機能のばらつきを評価した。樹木種多様性は、常緑広葉樹林>里山林>ヒノキ林の順に低下した。主成分分析の結果、常緑広葉樹林と里山林に比べて、単一樹種のヒノキ林では分解機能のコア間のばらつきが有意に小さかった。以上の結果は、樹木種多様性の著しい低下が土壌微生物の分解機能の空間的多様性の低下を引き起こすことを示唆した。森林の生物多様性を守るために、森林管理を行う際には地上部の多様性のみならず、地下部の多様性にも目を向ける必要がある。