| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-39 (Poster presentation)
都市近郊の身近な水生生物の生態については、あまり調べられていない。埼玉県越谷市の越谷北高校周辺にも、水田に接続した用水路が多く見られるが、どのような生物が分布しているのか、また外来種と在来種はどのように分布しているのか、よく分かっていないので、調査することにした。
調査は、6月から9月までの期間に主にタモ網とびんどうによる採集で実施した。タモ網による採集では、水底付近の生物を泥ごとすくった。びんどうは、市販のカメの餌を用いて用水路に沈め、一時間後に回収した。用水路は4つの地点に分けて、水流の強さ、水深などと採集された生物を比較することにした。
アメリカザリガニは、どの用水路でも非常に多く採集され、全体で3016匹も採集した。アメリカザリガニは用水路の環境によく適応していると考えられる。フナなどの魚類は、比較的水流が弱く、底に泥が堆積している場所で多く採集できた。
さらに、用水路の一部に魚類の移動を妨げるようなポンプがあり、三面をコンクリートで覆われている用水路では、採集される魚類の数が極端に少なかった。農業の効率化のための水路の整備によって、コンクリート三面張りや揚水ポンプの地点が増えることで、用水路の生態系が影響を受ける可能性がある。農業の利便性と、生態系の保護についてどのように両立していくのかを考えていく必要があるだろう。
今回の調査では、採集した魚類(特にフナ類、ハゼ類)について同定しきれていないため、同定の精度を上げていく必要があると考えている。また、採集されたドジョウ類には外来生物として知られているカラドジョウと思われる個体が多く見られた。カラドジョウの詳細な分布や、どのような環境を好むかなどの生態についてはあまり調べられていないため、今後の調査によって明らかにしていきたい。