| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-41 (Poster presentation)
多摩川水系では,カワムツやタカハヤ等国内外来種の侵入の報告があり(国土交通省,2011),在来種との競合と交雑がタカハヤとアブラハヤにおいて示唆されている(西田,2010).同様に、多摩水系秋川の在来種であるヒガシシマドジョウにも交雑が及んでいる可能性が考えられる。そこで、本研究では,近年分類が行われたシマドジョウ属のシマドジョウ種群に着目し,秋川に外来のシマドジョウ種群の侵入・交雑が起こり,多様な模様の変異が生じるのではないか,と仮説を立てて調査を行った.
調査は東京都あきる野市,小和田橋付近から下流部800mまでの秋川本流を調査地点とし,2016年1月から11月まで8回にわたりタモ網を用いて捕獲した.捕獲個体はフェノキシエタノールで麻酔処理を行い,バットの上で写真を撮り斑紋を記録し全長を計測した後に,尾鰭の一部を切除して逃がした.また,比較対象として同水系の浅川や荒川水系高麗川等でも同様に捕獲調査を行った.
ヒガシシマドジョウは尾鰭基底部に眼径より小さい黒色斑があり,弧状横帯が細かく4-6本であるという特徴がある(中島ほか,2012).しかし,捕獲した個体の中には尾鰭基底部の黒色斑が眼径より大きい個体や尾鰭の弧状横帯が4本未満の個体等,その特徴に該当しないものが含まれていた.スジシマドジョウ種群の体側斑紋は成長によって変化する(北原,2014)ため,秋川のシマドジョウ種群における尾鰭の弧状横帯の本数と全長の相関関係について調べた.その結果,概ね成長段階により弧状横帯の本数は増えるが,個体差が大きかった.これは,ニシシマドジョウ等の国内外来種との交雑に由来する可能性が考えられる.しかし,一般にシマドジョウ属の尾鰭や体側の斑紋は個体変異が見られる(斉藤,2005)ため,体側斑紋だけでの判別は難しい.そこで,捕獲調査の際に採取した尾鰭の一部を用いて,mtDNAのCytbの塩基配列の違いを調べ,外来のシマドジョウ種群が侵入している可能性についても発表する予定である.