| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-52  (Poster presentation)

侍従川の浚渫がハゼ類の産卵に与えた影響と今後の保全について

*深沢大地, 長崎光則, 重田優香, 田島駿一, 高橋一太, 金子英司, 平川美央, 佐野真吾(ふるさと侍従川に親しむ会)

侍従川は、神奈川県横浜市金沢区に位置する全長約3kmの2級河川である。ふるさと侍従川に親しむ会では、当地で25年間、保全・調査・啓発・体験の4つの目的を主体として活動を行ってきた。当会では、調査の一環として2012年から侍従川における3種のハゼ類(チチブ・ウキゴリ・シマヨシノボリ)の産卵地点の把握を始めた。しかし、2年目の2013年3月に、防水を目的とした川底を削る浚渫が行われた。よって、本研究では、侍従川に生息するハゼ類の保全を目的とし、浚渫が産卵に与える影響を検証した。また、今後の保全に関する提案も行った。浚渫後の2013年4月および6月に行った調査では、浚渫された区間の産卵地点数は3種とも減少した。翌年の調査では、ウキゴリのみ若干の回復が見られたが、他2種は回復しなかった。また、2012年から2014年にかけて、浚渫された地点より上流部と下流部の卵塊数を比較したところ、浚渫された地点より下流部の卵塊数は減少したのに対し、上流部の卵塊数は増加した。以上の事から浚渫は、産卵地点に影響を与えていることが明らかになった。しかし、ウキゴリにおいては、浚渫の影響を受けた場所の産卵地点数は減少した一方で、他地点の産卵地点数が増加していることから産卵場所を変えていることが示唆された。以上のことから、今後、侍従川で浚渫が行われる場合は、産卵が集中する地点や時期を事前に把握することや広範囲を一度に浚渫せずに狭い範囲を少しずつ行うことを考慮していただくことを提案する。


日本生態学会