| 要旨トップ | ESJ64 シンポジウム 一覧 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


シンポジウム S06  3月15日 9:00-12:00 G会場

気候変動と生物多様性の相互作用:生態系の機能性とサービスへの帰結

森 章(横浜国立大学)、藤井佐織(アムステルダム自由大学)

 気候変動の問題と生物多様性の問題は、互いに独立しておらず、相互に関与する。これら両者の問題は、国際連合下では関連条約がときに双子と例えられるほど、国際的にも同時的に関心を集め始めたものである。しかしながら、気候変動と生物多様性に係る研究や取り組みは、これまで並行して行われてきた傾向があることが度々指摘されてきた。両者が関わる問題についても、気候変動が種間や種内の多様性を如何に改変するのかを推定するといったような、一方向的な議論が多かった。言い換えると、研究の主眼は、気候変動が原因で生物種や群集の応答が結果に置かれていたとも言える。近年、双方の相互作用に対する関心がようやく高まってきた。たとえば、気候変動は生物多様性を改変する要因となり得るだけでなく、同時に、生物多様性は気候変動による生態系機能や生態系サービスへの影響を緩和する潜在性を持つ。気候変動は炭素や窒素循環のような生態系プロセスを直接的に改変するが、気候変動による生物群集の改変を介した間接的な生態系機能への改変の効果が、同等あるいはより甚大との報告も見られるようになった。両者の関係性、依存性、相互作用についての知見はまだまだ緒に就いたばかりであり、基礎的、理論的、局所的な実証研究の積み重ねがまだまだ必要である。
 本シンポジウムでは、気候変動と生物多様性を主たるキーワードとして、生態系機能やサービスに対する潜在的な影響や帰結について、特に実証研究に焦点を当てて議論する。2015年の日本生態学会鹿児島大会においても、「生物多様性、生態系機能、そして生態系サービス」のシンポジウムを行った。本シンポジウムは、前回の議論とそこから生まれた成果を引き継ぎ、これらの関係性に気候変動の文脈を加えて、より議論を深化させることを目指す。

コメンテーター:工藤岳(北海道大学)

[S06-1] 概要説明:気候変動下における生物多様性と生態系機能 森章(横浜国立大学大学院環境情報研究院)

[S06-2] 生物群集構造の変化が気候変動に及ぼす影響に関する考察:チベット高山草原における長期炭素循環研究から 廣田充(筑波大学生命環境系)

[S06-3] 生物群集の入れ替わりが駆動する土壌分解プロセス:気候変動下における予測 藤井佐織(アムステルダム自由大学)

[S06-4] 生物群集が改変する気候変動影響:アマモ場の海洋酸性化緩和機能に着目して 仲岡雅裕(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター厚岸臨海実験所)

[S06-5] 気候変動に対する生態系機能の安定性を規定する要因を探る:自然草原における実験から 佐々木雄大(横浜国立大学大学院環境情報研究院)

[S06-6] 気候変動と生態系変動の関係を読み解くための非線形時系列解析 土居秀幸(兵庫県立大学大学院シミュレーション学研究科)


日本生態学会