| 要旨トップ | ESJ64 自由集会 一覧 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
自由集会 W28 3月17日 18:00-20:00 E会場
小笠原諸島では自然再生を目的とした外来種対策が行われている。かつては大規模な外来生物駆除を実施することが難しかった。しかし、最近では外来種対策に対する社会的コンセンサスが得られるとともに、効果的な駆除方法も開発されてきており、代表的な保全管理手法の一つとなっている。実際、小笠原ではこれまでにノヤギやネズミ、ノネコ、グリーンアノール、アカギ、トクサバモクマオウなど様々な外来生物の駆除が実施されてきた。
これらの外来種対策事業により、多くの成果が得られている。ノヤギの駆除は、在来植生の回復のみならず海鳥繁殖地の再生にもつながっている。トクサバモクマオウの駆除後には在来植生が更新し、その植生を生息地とする動物相の回復も確認されている。
その一方で、外来生物駆除はこれまで認識されていなかった課題に直面する新たなフェーズに突入している。大規模な外来生物駆除は、在来生態系にも大きな影響を与える。外来種問題は、駆除により解決にされると単純に捉えられることもあるが、対策に伴いさまざまな想定外の課題が次々に起こったのが現実であった。
この自由集会では、まず可知直毅(首都大)がノヤギ駆除に伴い植食者から解放され分布を拡大した外来植物にまつわる問題を紹介する。次に、千葉聡(東北大)が駆除後に再度増加したネズミによる過剰な捕食による陸産貝類への影響について紹介する。さらに、苅部治紀(神奈川県博)が有人島から無人島へのアノールトカゲ拡散の問題を紹介する。
これらの「想定外の事象」は全く想定されていなかった訳ではない。最悪の事態は生じないだろうという暗黙の期待の下に対策が進められた結果、想定以上に深刻な課題に直面したものである。総合討論では、保全に関わる研究者が果たす役割と責任について議論したい。コメンテータとして、大河内勇世界自然遺産科学委員長ほか環境省などの行政関係者を予定している。
[W28-1] 風が吹いても桶屋が儲かるとは限らない
[W28-2] ノヤギ駆除の誤算:駆除後の外来植物の拡散
[W28-3] ネズミ駆除事業は陸産貝類を救えたか?
[W28-4] グリーンアノールは人知れず海を越える
[W28-5] 総合討論:想定外は想定外か?