| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(口頭発表) B01-07 (Oral presentation)
ヒアリの日本初記録によって、2017年は日本中が外来性アリ類の脅威を再認識した年となった。殺人アリ報道の過熱は社会不安を増長し、砂場の閉鎖や家庭用殺虫剤の大幅な売上向上といった問題も散見された。その一方で、ヒアリ侵入において、日本は水際対策に成功している稀有な事例となっている。幸運であったのと同時に、場面場面では少なからず混乱が見られつつも、現行で稼働する仕組みや、利用可能な技術を素早く動員して対応した成果と言えるだろう。今後は近い将来に危惧される野外定着を想定し、それをできるだけ早期発見できるモニタリング技術の改良と、発見時に迅速に対応できる社会体制と技術整備が緊急課題となる。沖縄県は、野外定着の可能性という点においては、日本の中で最も大きな危険性とそれに伴う影響が予想される地域である。すでにヒアリが定着する台湾に近く、ヒアリ定着の条件はほぼ整っている。一旦定着すれば、観光地としての沖縄のブランド価値が大きく下がることは容易に想像できる。また、沖縄は生物多様性のホットスポットであり、豊かな島嶼生態系で構成される。ヒアリ定着による在来生物への影響は、これらに深刻な問題をもたらすだろう。ヒアリ被害の本質は経済的損失や生物多様性の損失にあると言われる理由である。
ヒアリ報告地域を中心として本州各県が混乱を見せる中、沖縄県はヒアリ防除対策において、独自で先進的な取り組みをみせる地域として注目された。ここには、OISTによるOKEON美ら森プロジェクトが構築した環境モニタリング網と、社会協働ネットワーク、それらを活用した沖縄県外来種対策事業の存在が大きい。本発表では、地域社会連携型環境モニタリング研究「OKEON美ら森プロジェクト」が、沖縄社会と協働して取り組む、外来性アリ類監視システム構築の経過を紹介する。