| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(口頭発表) B01-10 (Oral presentation)
植物は光合成によって固定されたエネルギーを繁殖・成長・生存のために配分している。植物が新たな地域に侵入すると、アリー効果や、天敵がいなくなることなど、様々な要因によりもたらされる進化の過程によって、繁殖・成長・生存へのエネルギーの配分が変化すると考えられる。その変化は生活史行列(推移行列)の要素に反映されるはずである。本研究は、植物の生活史行列に関するデータベース等の情報から行列モデルを構築することによって、(1)個体の流れと(2)弾性度に着目した在来種と外来種の比較をおこなった。(1)個体の流れとは、生育段階間を推移する個体数の相対的な大きさを表すものであり、生活史行列と安定生育段階構成より求めることができる。(2)弾性度は、生活史行列の要素の変化が個体群増加率に与える影響の相対的な大きさを表している。解析の結果、個体の流れと弾性度ともに、在来種と外来種では異なることが明らかになった。外来植物が導入されてから時間が経過するにつれて、種子への個体の流れは小さくなった。一方、外来植物が導入されてからの経過時間にかかわらず、種子生産を低減させることによる個体群増加率の低減効果の大きさは変化しなかった。また、導入初期ほど、刈り取り等のサイズの増加を抑える対策が有効であることが明らかになった。個体の流れと弾性度を解析することにより、植物の進化や効果的な外来種管理に関する知見を得ることができた。
[参考文献]
Yokomizo H., T. Takada, K. Fukaya, J.G. Lambrinos (2017) The influence of time since introduction on the population growth of invasive species and the consequences for management. Population Ecology 59, 89-97