| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(口頭発表) J01-07 (Oral presentation)
日本国内には多くの侵略的外来種が定着している。外来種が在来種に与える影響についての研究は数多くあるが、先行研究では資源競争や闘争について考えているものが多い。そこで本研究では在来種と外来種共に感染する病原体に着目した。国内に生息する外来種から国内に自然分布しない寄生虫や細菌・ウイルスなどが発見されることがある。これらの病原体は外来種のみならず在来種にも感染し影響を与える場合があり、病原体が外来種にとっての「生物学的な武器」として機能しうるものであると言える。これは、国内に侵入する外来種が、同時に病原体を持ち込むことにより在来種との競争を有利に進める可能性があることを示しており、disease-mediated invasion(DMI)として知られている。本研究では、外来種シロアゴガエルPolypedates leucomystaxと在来種オキナワアオガエルRhacophorus viridisの競争について、シロアゴガエルから発見された線虫Raillietnema rhacophoriが与える影響を考慮し数理モデル化した。解析の結果、在来種集団に外来種が侵入すると、①在来種に影響を与えない、②在来種集団に線虫のみが定着、③外来種が定着し在来種と外来種が共存、④外来種が定着し在来種が絶滅、という4つの最終結果に至る事が分かった。そこで、各平衡状態の安定性を調べることで、病原体としての線虫の影響を評価した。その結果、外来種の侵入にとって最適な中間的なレベルの線虫の毒性が存在し、これは外来種の競争力や線虫への耐性などと相関があることがわかった。また、外来種の侵入可能となる線虫の毒性Virulenceには下限と上限が存在する場合があり、この範囲外では外来種は侵入できず、外来種の持ち込む線虫の毒性は高ければ高いほど、外来種の侵入を促進する訳ではないことが分かった。