| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(口頭発表) J01-09 (Oral presentation)
佐渡島では、2008年から環境省によるトキの野生復帰が実施されている。当初の「2015年までに60羽の定着」という目標は2014年に達成し、現在は「2020年までに220羽の定着」という新しい目標のもとトキの再導入プログラムが進行している。佐渡島で2008年に最初の10羽が放鳥されてから、過去10年間に288羽のトキが放鳥されている。また、2012年以降、毎年巣立ちが確認され、4〜77羽の若鳥が個体群に加入し、2018年2月1日現在290羽に達している。しかし、まだ野外での繁殖成功率は低いため放鳥により再導入個体群は維持されている。真の野生復帰を実現するには、繁殖の抑制要因、および、佐渡島でのトキの環境収容力を明らかにしたうえで、放鳥個体群を管理していく必要がある。佐渡島内での生息個体数が増えるにしたがって、生息域は拡大し繁殖番数も順調に増加したが、新既放鳥個体、および、既放鳥個体の生存率は変化せず、逆に、繁殖つがい数が増加するにつれて繁殖成功率は増加していた。このため、佐渡島内のトキの個体数は負の密度効果を示していず、飽和密度に達していなかった。そこで、トキの生息可能個体数を佐渡島内5kmメッシュ毎の最大営巣数をもとにしたハビタット選択モデルを構築し推定した。5kmメッシュ内のトキの営巣数は畑地、森林、竹林等の植生、気温や降水量などの気象データ、および、放鳥場所からの距離で説明された。これらの要因から佐渡島におけるトキの生息可能個体数について議論する予定である。